夢の中の登場人物

 空を自在に飛ぶ夢や顔が脱皮する夢は何度も見てきたが、

身体が透明になってゆく夢は初めてみた。

この暑さでは脳がオーバーヒートしてもおかしくない。

西日本では豪雨らしいが、東京は連日の猛暑である。

今年も誕生日の前後は原稿書きで、昨日終わらせるつもりが明日の朝になりそうだ。

西瓜、トウモロコシ、そうめん、西瓜、トウモロコシ、と続いて、

さすがに次が西瓜では 芸がないと、米を焚いてみたが食欲が起きない。

うつらうつらと原稿を書いていると、夢か現実かわからなくなってくる。

40年も前から夢をノートに綴っているが、ダンボールごと友人宅に預けていたり、

実家の屋根裏部屋でねずみに齧られていたりして、全部を捜すのはもう無理だろう。

ときどき、屋根裏部屋の夢を見る。

小学3年生の春、父が出入りの大工に作らせた勉強机の抽斗に入っている鉱石ラジオや、

プラモデル、野球盤などを捜しに帰る夢だ。

現実には誰の手にも触れず60年近くひっそりぼくを待っているのだが、

夢の中では、抽斗を開けると捜していたものが消えている。

焦って捜すうちに目が覚めるという仕掛けである。

夢に登場した死神や貧乏神、詐欺師や娼婦に似た人と現実世界でばったり出会うことがある。

一度だけ、ぼくはあなたに夢であったことがある、と言って苦笑いされたことがある。

さすがに貧乏神だったとはいえなくて、何だか気まずい雰囲気になった。

 印象に残る顔は夢の中ではあまり良い職業の人ではないので、

現実に似た人に出会うと、必死で先入観を打ち消すよう努力する。

しかし、これが後になって、ほぼ間違っていないことが判明して気が滅入る。

最近も、重要な人物となった方が、初印象に近づいてきて困っている。

あなたは夢に出てきた悪い人に似ているので信用できない、とは言えないで付き合ってきた。

むしろ、必死で夢の印象を打ち消してきた。いまも、そうしている。

 夢は夢に過ぎないのだ。ぼくはきっと疲れている。

さあ、頑張って台本を仕上げよう。