今日は66歳の誕生日

夏の真っ只中に生まれたぼくは、当然のように夏は水を得た魚のようです。

ああ、今日は誕生日か…とぼんやり思い出しながら横になった昨夜、

不思議な夢を見ました。他人の夢ほどつまらないものはないといいますが、

66歳の誕生日に見た夢を綴ります。

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25歳のぼくが、66歳のぼくにインタビューしているのです。

25歳といえば、星野副編集長の下で週刊少女フレンド の記者として、

芸能人をインタビューしていたはるか昔の時代です。

「夢のような人生だった。いや、これは夢かも知れないな」

と、ぼくは穏やかに答えているのです。

25歳のぼくは、少し苛立った顔を隠せず、こめかみを神経質そうな指で押しながら、

手帳にその言葉をメモしつつ、66歳のぼくに尋ねました。

「何か、具体的な、その夢のようなお話、エピソードはありますか?」

「きみは、若い頃のぼくだろう?どうだい、これこそが夢のような話じゃないか」

25歳のぼくは、ひどくこめかみが疼きました。夕べは写真部の津田さんと同僚の葛西君、

川鍋さんと徹夜マージャンで、朝、仮眠室でシャワーを浴びて飛び出して来たばかりだったのです。

「何も苛立つことはないんだよ。すべては時が流してしまう。ぼくの過去は、夢と同じだ」

「それは違うと思いますよ。66歳で、そんな仙人のような境地に達するとは思えませんが、

特に、あなたのような方が」

若いぼくは、少し言葉が過ぎたと自覚したのか、背筋を伸ばして身構えた。

「そうだね。ぼくはね、この先も、きみの言うとおり、きっと足掻きながら生きて行くと思う。

だが、ぼくを見てご覧、どうだい?少し透き通って見えないかい?」

66歳のぼくは、両手を広げ、足を伸ばして、少し宙に浮いて見せた。

「ほ、本当ですね。あなたの身体が宙に浮いてるように見えます!それも、かなり透き通ってみえます!」

若いぼくは、ソファーに仰け反った。

「あと20年も生きれば、ぼくは自由自在に地球を空から眺められるだろう。龍に乗らずとも、

ぼくは自力で生きて来たからね。天が褒美をくれたのだよ」

66歳のぼくは、25歳のぼくの頭上に浮かび上がって去った。

25歳のぼくは、星野副編集に何と報告しようかと、手帳を覗き込んだ。

そこには、メモした文字は一つもなく、ただ白い空白が無限に広がっていた。

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たくさんの方に祝福のメッセージをいただいた。ただただ感謝するのみである。

ありがとう!面白い本を書きます。