過去は過去、されど過去…

断ち切るべきは未練、断ち切れないのが未練…

長く生きれば生きるほど、尾長鳥の尻尾のように、過去はめんめんと連なる。

過去も未来も現在も大切なことに変わりはないが、

人生はメビウスの環のように 過去と未来と現在が交差することがある。

浦島太郎は昔助けた亀に連れられて竜宮城へ行き、

夢うつつの時を過ごし、帰ってみれば白髪の老人と化した。

飲めや歌えやで過ごした人生の方が世知辛い現世を生きるより良かったかも知れないよと、

なぐさめることも出来る。が、太郎は辛くても現世で泣き笑いしたかったと泣くだろう。

新生児で取り間違えられて60年を生きた男性の訴えで、病院に過失の支払い命令がでた。

実は今、病院に盗みに入ったこそ泥が火事に出くわして、

逃げ込んだ新生児室から赤ん坊を抱いて 逃げて12年、

苦労してその子を育てたエピソードを含む芝居の稽古中である。

タイトルは”クリスマスチャペル” 過去は過去、振り捨てる勇気も必要だろう。

だが、人生に「もしも 」はない。皆、自分の過去を背負って生きて行かねばならない。

60歳の男性は、本来なら裕福な家庭の子供だったらしいが、親が貧しく中学を出て働き尽くめだったらしい。

裁判所が同情するくらいだから、悲惨だったのだろう。

ぼくの芝居では、さらわれた赤ん坊は、そのこそ泥がまっとうに働いて大成功して、

何不自由ないお嬢様として育った。だが、彼女は、本当の父親ではないと知ったとき、心を閉ざしてしまう。

今回はその12歳の少女を、少女人形舞台の西本早希が演じる。楽しみです。

キリギリス考

 昼下がり、歩きながら考えた。

定年までしっかり働き、若い頃夢見た悠々自適の老人生活を満喫している友人がいる。

実に潔いというか、若い頃から覚悟を決めていたのだなと感心する。

くらべて、ぼくはどうだろう…。若い頃から好き勝手面白おかしく生きてきた。

老人になってどう生きるか、などと考えたこともなかった。

年金の話などする友人を”そんな先のことがわかるか”と、笑ったこともある。

そして振り返ると、老人と呼ばれる歳になっていた。果たして覚悟はあったのだろうか?

漠然とだが、生きている限り仕事を続けているであろうことは自覚していたように思う。

芝居を作ったり、踊りを踊ったり、歌を歌ったり、ずっと変わらないことをしている。

” キリギリスの寝ぐらさがして月の下 …”

さびしい句だが、老いたキリギリス には帰る寝ぐらはない。

最後は丘の草むらで、月の雫を末期の水とするのだろう。

寓話のような、蟻に助けを求めるキリギリスはいない。

キリギリスにはキリギリスの矜持がある。さび付いた楽器を枕に最期の夢を見るのだ。

稽古始め!

笑っても泣いても時間は待ってくれない。

というわけで、今日からクリスマス公演(12月21日中野芸能小劇場)の稽古開始!

今年も、ベテランから新人まで、わくわくする出演者が揃った。

ちょうど一ヵ月後本番を迎える。稽古も楽しいが、本番はもっと楽しくなる予感がする。

どうぞお楽しみに! 

気力を取り戻す方法

 ここまで落ちるのは年に何回もあることではないので、

鬱ではないかと疑ってみる。

自分で鬱だと思うのは鬱ではないと 医者に言われたことがある。

念入りに柔軟体操をして、ゴルフクラブを持って屋上に上がる。

遠雷が聴こえる。雷がゴルフクラブに落ちるんじゃないかと 心配になる。

その昔、栃木のゴルフ場で近くの大木に雷が落ちた瞬間もグリーンでパターを打っていた男が、

なんという弱気なことを!と、自分を鼓舞するが、そんな強気もすぐにへなへなと崩れる 。

嗚呼、みなぎる気力が欲しい!

いや、待てよ…、この際、このディープな泥沼のような気分の中に、思い切って浸ってみようか。

みなぎる気力も輝く明日も望まず、この暗闇にもぐりこんでみることにする。

出ました破滅思考、と笑われそうだが、他に方法が見つからない。

諸君!暫しグッドバイ!

秋雨の中で

 街へ出ると、あまりの人混みに立ちすくむことがある。

そしていつも、この人の群れが劇場に脚を運んでくれたらと 思う。

儚い望みと分かっているのに、思ってしまうのだ。

街には秋雨が音もなく降り注ぎ、寡黙な人々が溢れていた。

ぼくの孤独は恐ろしいほど鮮明に、まるでレントゲン写真を見るように脳裏を占拠していた。

ショルダーバッグからノートを取り出し、早急にやらなくてはならない作業をメモした。

〇12月公演のチケット販売をコリッチに依頼する件。

〇和歌山旅行かばんに送る歌入り音源 を録音する件。

〇ライブを録画してもらったVTRのチェック。

〇稽古日程の調整とキャストの出演依頼。

〇フライヤー制作の準備。

などと書いていたら、眩暈がしてきた。

まだまだたくさんあるのだが、ノートに書き込むのをやめた。

体力を取り戻すより気力を回復させることの方が、ずっとエネルギーを要する。

泣きたい夜のライブが終わり

 竹内緑郎&旅行かばんのライブへお越しくださいました皆様、

小雨降る中をほんとうにありがとうございました。

ステージに立つと、お客様のありがたみがひしひしと胸にせまります。

貴重なお時間をいただいているという実感がありながら、つい予定をオーバーしてしまいます。

しみじみと演るはずだったライブが、またいつものように脱線してしまい、

別の意味で泣きたくなりました。今回は終わってからの落ち込みがかなり大きくて、

深夜の友人からの電話も長引き、明け方ヒドイ悪夢にうなされてしまいました。

言い訳が出来ることは何処を探してもないので、さらに落ち込みます。

和歌山に音資料で送るつもりでいたのだが、やっぱりスタジオで録音して送ります。

泣いてばかりもいられないので、12月6日に向けて稽古に励むことにします。

10ヶ月ぶりのライブ、本当にありがとうございました。

リハーサルを終えて

 リハーサルでお世話になっているスタジオが今月半ばで店仕舞いする。

個人練習でも広いスタジオが格安で利用できるので、

深夜に大声を出して憂さ晴らししたり、新曲を録音したり、

勿論、ライブ前のリハーサルには欠かせなかった。

スタジオの壁にはライブのポスターも貼ってあり、

(ぼくのは3スタのドア前に貼ってあり、見ると気持ちが引き締まった)

スタジオの壁はアーティストのポスターやチラシで埋め尽くされていて、

休憩中に見るのも楽しかった。

今日のリハーサルが最期だと思うと感傷的になってしまい、

歌いながら声が詰まった。今日は調子が出ないなと誤魔化したが、

バレバレだったかも知れない。

ゲストの岩尾摂子さん、萱沼千穂さん、そして三森万輝さんも参加して、

最期のリハーサルが先ほど終了した。

ギターを担いで夜道を帰りながら、まとわりつく思い出たちに、

レクイエムを唄った。

♪ ぼくが死んだら銀の柩に深紅の薔薇を敷き詰めて~

二度と眠らぬ剥製にしておくれ きみが目覚める部屋の片隅に ♪