時は21世紀、八月の終わりに

 見上げた空に秋模様の雲がちらほら浮かんでいる。東の彼方には積乱雲が不気味に陣を張っていて、まだ夏は終っていないぞとばかりに主張しているようだ。

 今日で八月も終わりだというのに、ただ暑い。原稿は遅々として進まず、時は刻々と命を削り取ってゆく。考えてみれば残酷なことだ。いつ終るともしれない世界で、続くことを信じて仕事をしている。例え明日終わろうとも、今日の仕事を続けるのだ。

 それが人間だよと言ってしまうのは簡単だが、生きとし生けるもののすべてが健気に仕事に励むのは感動でもある。暑い最中、蟻の行列は続く。果実は実り、夏草は庭を覆いつくそうと繁る。そして、ぼくも、何とか責任を果たすべく炎天下の街へリュックを背負って出かける。

 フェイスブックにチャレンジしたが、有効なメールアドレスではないと断られた。21世紀に迷い込んでいることを実感した。

ザ・ラストディ・イン・メリーココ

 二年間にわたって、少女人形舞台、竹内緑郎ライブでお世話になってきたHOTELサクラフルール青山とそのラウンジメリーココ。

 残念ながらHOTELとラウンジのリニューアルに伴い、9月22日の少女人形舞台”人形のベル・エポック”が最期のショーとなってしまう。素敵な空間で、少女人形たちも随分成長させていただいた。メリーココ最期の舞台を終えたら、ぼくらは流浪の旅に出なくてはならない。先ずは9月22日の舞台を最高に仕上げるために稽古に励もう。

 旅立ちの日はいつか必ずやってくる。少女人形舞台は、パリ公演を目指しているのだから、一歩前進だと前向きに考えよう。

”人形のベル・エポック”というタイトルを考えたときは、まだリニューアルを聞いていなかった。なのに、集大成的なタイトルが浮かんだのは、そろそろ潮時だと感じていたのかも知れない。澤田樹里亜も、満月あいりも、急成長してきた。少女人形舞台が羽ばたく日は、もうすぐそこに来ている。あきらめない夢は、手を差し伸べてくる。簡単ではないが、掴み取れないことはない。

夏の終わりのミステリィ

 そろそろ夏も終わるはず、なのだが、

とにかく暑い日が続いている。

 少女人形舞台の月例公演「幻奏の宴」も6回目となる。

8月25日土曜日HOTELサクラフルール青山の1階にあるメリーココで、昼は13時半、夜は17時開演です。

 今回は現在のベストメンバーに、昼夜交替で二人のゲスト、昼は何とジャズシンガーの三森万輝さん、夜は声優歌手の萱沼千穂さんです。

 満月あいり、西本早希が新たな歌の世界に踏み込んだパフォーマンスに挑戦し、澤田樹里亜も今までに経験のない表現に挑戦し、梁島惇子と吉川沙緒梨がショートプレイで腹話術師と人形を演じる。

 またか涼と満月あいりの初コンビでのショートプレイもあり、朗読、歌と、いくら時間があっても稽古が足りない日々の連続。新人の由杏あゆのギター演奏参加で、また舞台の幅が広がった。スタートから参加している伏見梨沙のドールパフォーマンスも、高度に研ぎ澄まされてきた。25日は是非お楽しみに。稽古は残すところ2日間、稽古場も熱い。

売国奴の末裔(8・15敗戦記念日に思う)

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 父は98回目の夏を迎えて、今尚生きながらえている。 

 二千年の歴史は複雑過ぎて、売国奴の意味さえも希薄にしてしまう。1945年5月、熊本で召集された父は、沖縄送りを拒否して、仲間を引き連れ、鹿児島から引き返した。軍法会議にかけられる間もなく敗戦となったが、父とその仲間は戦後も非国民呼ばわりされた。

 生意気盛りの少年時代、尻馬に乗って父を非国民と罵ったぼくに、悲しげな顔で「あのとき引き返さなかったら、君は生まれていないのだが」と、父は静かに呟いた。

 争うことが嫌いな父は喧嘩をしたことがなかった。今は、彼こそ真のリベラリストだと、誇りを持って讃えられる。三十路過ぎの医者と鍛冶屋と遊び人に、弾のない銃を持たせて戦地へ向かわせる日本帝国とは何だったのだろうか。父は笑って言う。

「今も昔も、何一つ変らない。悪代官は民から年貢を取り立て、おのれは美酒に酔う。君は政治に憤ることなく、いい芝居を書き、歌を歌えばいい」

「それでは自分勝手過ぎませんか?友人は原発反対のデモに参加しているのに」

「自分を買いかぶってはいけない。もっと精進しなさい」

 嗚呼、2012年8月15日は、この国を守るために戦場で散った多くの先達、愚かな指導者のために無差別に惨殺された子供や非戦闘員、そして、責任を取って命を断った指導者、生き残ってこの国を再興した名もない人々、敵味方の区別なく、すべての人々のために黙祷を捧げよう。

 増税に命を懸けるなどと馬鹿なことをいう指導者を選ばないために、ぼくらはもっと賢くならなくてはいけない。誰もが笑って暮せる世界が来るよう、ぼくらはもっと知恵を絞らなくてはいけない。無力な民が虐げられる国が、健康であるわけがない。

 

 

数奇な運命を生きる友よ、君の明るさに励まされて今日も生きる

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 ベトナムの騒乱を逃れて日本へ来た少年は、その後パリへ渡り、レストランを経営して成功をおさめている。ブログでも年に1回は彼のことを書いているが、今年もぼくを訪ねてくれた。

 ぼくより一回り年下だが、精神的には一回り年上だ。もてなしも出来ない境遇にあるぼくに、良いときも悪いときも付き合うのが友だと彼は笑う。両親の死、革命、そして海外脱出と、過酷な運命に翻弄されながら50年を生きての笑顔には、説得力がある。

 成功の秘訣は何か、と尋ねたら、

「先ずは新鮮な食材、そして適切な価格、そして、決して味の変らない心を込めた料理です」と、真面目に応えてくれた。レストランに限らず、ぼくらの仕事も芯は同じだろう。

 シャンゼリーゼ通りにあるという彼の店は、まだ写真しか見ていないが、世界の一流人が通う立派な造作の店構えだ。日本贔屓の彼がつけた名前は”EBISU”という。パリに行かれた方は是非その料理を堪能してください。料理を褒められるとワインをプレゼントしてしまうらしい。ぼくは、今年もパリに行けそうにない。

 

リアルとバーチャル・五輪の夏

 インターネットの世界は実に不可思議で、アナログ時代を生きてきたぼくは戸惑うことが多い。ニコニコ動画の生放送とやらにかかわって脚本を書いていて、昨日はスタッフとの打ち合わせだった。

 インターネットは妄想を楽しむメディアだというスタッフがいて、興味深かった。彼に言わせれば、政治とのかかわりも妄想世界の一現象で、テレビや新聞と同列に論じてはいけないらしい。ぼくから見たら同じメディアに思えるけどね。どれも妄想の温床だし、真実を探すのは浜辺の砂から宝石をさがすようなものだ。ただ、彼の言うように、”TVや新聞を見る人は記事を信じやすく、インターネットを見る人は疑って見る傾向がある”には一理ある。それにしても、疑って見る人たちに向けて”リアル感のある物語”を書けという注文を、ぼくは毎週頑張って書いているのだ。書くことが好きなんだろうね。

 ぼくは今、妄想世界に住む天野雨女さんという方が気になっていて、何とかコンタクトとれないものかと思っている。ニコ動のスタッフにその話をしたら、即座に”無理です”と言われた。”現実世界と関わりたくないからバーチャル世界を楽しんでおられるのです”と、まるで彼女と知人のような口ぶり。ITの人って連帯感が強いようだ。

 ぼくもペンネームでこうしてブログを書かせていただいているが、妄想世界ではないと自覚している。しかし、作っている芝居や歌は、すべて幻想の出来事である。このブログは、現実と架空のハザマにある。ときには見た夢の話を書いたり、ときには舞台の宣伝をしたりする。リアルもバーチャルも、ニコ動もオリンピックも、ぼくにとっては面白い夢とかわらない。そしてかなり本音をさらしている。

 雨女さん、良かったら、ぼくが精魂込めて作っている「少女人形舞台」を観に来てくれませんか!お忍びでも構いません。今月は8月25日土曜日、場所はサクラフルール青山のメリーココです。13時半からと17時からの2回公演です。

眠らない五輪の夜に

 日頃興味も持たなかった競技を、五輪だと興奮しながら観る。

 原稿を書きながらのTV観戦だが、もう2週間目に入った。

 それに、本を2,3冊読みながらなので原稿がはかどるわけがない。少女人形舞台8月のショーの参考に「ドイツ幻想文学」を読んでいたのは、まあ許せる。書棚から引っ張り出した「好色風流こばなし」と「ロマンの寺」など、こんな忙しい最中に読んでいる場合ではない。

 なのに、くだらない川柳まで作り出して、もうどうにも止まらない。

 その一、

 世も更けて 子供の寝息に窓の月

  その二、

 雨上がり 浴衣はだけて窓の月

「窓の月」というネーミングがあまりに風流だったので、つられて作ってみた。江戸文化は本当に奥が深い。語り継ぎたいものだ。

芝居観劇とオリンピックと原稿書きで

 下北沢での一人芝居観劇から高円寺明石スタジオ、そして青山草月ホールの「旅立ち~足寄より~」まで、芝居観劇が続いた。その間、原稿締め切りも続いていて、オリンピックのTV観戦。”そりゃ寝る時間はなくなるでしょう”と、友人に呆れられた。

 8月25日の少女人形舞台「幻奏の宴~夏の終わりのミステリー」の台本も遅れている。昨日は、出演者たちと、新しい試みの稽古を4時間、みっちりやった。個々の力量も要求される極めて難しい集団パフォーマンスを考えたので、ひとつひとつ説明しながら、丹念に理解を求めた。誰もが同じ感性ではない。しかし、それぞれに出来上がった形が想像できれば、そこへ向かって汗を流せる。

 まだ4週間ある、と、思ってはいけない。時間は流れ星のように瞬く間に過ぎ去る。だからといって慌てても仕方がない。コツコツと仕上げます。少女人形舞台は、ますます面白くなります。ご期待ください。

 今夏はなるべくクーラーを使わないようにしている。原稿執筆ではなく、パソコンで書いている。汗で原稿がにじむことはないが、パソコンが熱く感じる。いや、実際、熱い。まだまだ、この暑さは続くらしい。10年前まではこの暑さのなかでゴルフをやっていたのか、自分だったとは思えないなあ。

 久しぶりに友人から誕生日ゴルフを誘われた。君ががやるならやるという友人が3人揃ったが、そのひとりが、クシャミをしてわき腹に肉離れを起こしてしまった。笑い話では済まない歳になってしまったので、のこった3人は、ここは自重することにした。